【美食の街ボローニャのミシュラン★】19世紀の小劇場がレストランに。3時間のフルコース

とにかく「ハコ」が素晴らしいレストランです。1899年に建てられた劇場「Teatro Eden Kursaal」が2007年に、イ・ポルティチホテルによって全面リノベーションされホテル直営のレストランになりました。

  • 店名:Ristorante i Portici
  • 場所:「イ ポルティチホテル ボローニャ」内
  • 住所:Via dell’Indipendenza 69, Bologna 40121(Googleマップで
  • 2018年ミシュランガイド1つ星(ボローニャ市内では唯一のミシュランスター獲得店)

昔はこんなにクラシカルな劇場でした(↓ホテルのHPより)それが、レストランに↓。構造はほぼ当時のまま。2階席もちゃんと残っています。こんなに優雅な空間のレストランを自分は他に知りません。

このレストランのすぐ横に、何回か行ったことがあるパスタ工房(こちらもホテル直営)があり、そこからこの「劇場」が見えていて、初めて見たときは、こんな空間で食事するのか!、と驚きました。

それで、いつかここで食事してみたいと思っていました。

 

コースは3種類

  1. ボローニャがあるエミリア地方の料理を中心とした「Terre Emiliane」(84ユーロ)
  2. 魚料理中心の「Nel Blu…」(90ユーロ)
  3. そしてメニュー数が最も多いフルコース「2018 l’inizio…」(110ユーロ)

ホテルのサイト内にもPDF版のメニューが掲載されているので、あらかじめじっくり作戦を立ててから食事に臨むこともできます。

シェフの出身地はラツィオ州のラティーナという町なので、①のエミリア地方(ボローニャがあるところ)の料理にこだわる必要はないのかなと思い、③のフルコースをとることにしました。5皿目の「鳩とオマールエビ」について、本当に鳩なのか聞いてみると、
「淡白で食べやすい。うちの一押しの1つ」
と言われましたが、友達のほうが「鳩はやっぱりちょっと‥」ということだったので、アラカルトメニューから「牛の頬肉」を選んでそれに変えてもらいました。

 

ワインはフランチャ・コルタ

最近はどこに行っても、普通は食前酒として飲まれる白発砲の定番「プロセッコ」を飲んでいます。

もっと稀少な銘柄を、得意気に好みのワインとして挙げたいものですが、プロセッコのように誰にでも飲みやすく分かりやすい味が、幸か不幸か自分の好みで、粋がっても仕方がないので、ちょっといい店でも臆することなく「プロセッコ」を注文しています。ワインリストの「Italian Sparkling Wines」のページからプロセッコを探します。

が、置いてあるのはフランチャコルタという銘柄だけ。フランチャコルタはイタリアが誇る白発砲の最高峰で、知名度こそ劣りますがフランスのシャンパンと並ぶクオリティのワイン。

もちろん異論なし。有名になり過ぎてちょっとベタな感じもするプロセッコを置いてないのは、むしろ店の格かも。ワインリスト1ページ、すべてフランチャコルタですが、1番上の1番手頃なのにしておきました。

 

3時間に及ぶフルコース

2時間ぐらいかと思っていましたが、最後のデザートを食べ終わったときは2時間50分ぐらい経っていました。

自家製パン、奥にあるのはライスチップス。色は海藻やサフランから。

つけだし。左上の生ハムがのっているプレートは、生ハム&メロンという食べ方をイメージした味付けなのだとか。

ボローニャがあるエミリア地方の名物「ニョッコ・ティジェッレ ngocco tigelle」↓。揚げパンのようなものを生ハム類と一緒に食べます。山のほうへ行くと、これ専門レストランも。

まだコースは始まってもいなくて、この↓「海のサラダ」がメニューに載っている1皿目。写真下の四角い皿から時計回りに食べていくのがいいですよ、とのこと。左下の皿はアサリ。

↑左上の皿が美味しかったので単独で写真↓。イカです。

ナポリ産カボチャ、ウニ、海藻、ライムのリゾット。絶品。
ウニは身が入っているわけではなく、ソースになっています。

ボローニャやその近辺の街の郷土パスタ「トルテッリ」↓。中にリコッタチーズ等が入っている詰め物系のパスタ。バターとパルミジャーノのソースなどで食べることが多いですが、ここではレモンのソースと、イカと海老が添えられています。

5種類のトマトの太麺スパゲッティ。トマトソースのスパゲッティという、家庭で作る超基本パスタがこういうレストランのメニューに入っているというのが驚きです。もちろん、今まで食べたトマトソーススパゲッティの中で1番おいしかった。

「鳩とオマールエビ」からかえてもらった「牛の頬肉」↓。バローロとバルバレスコというイタリアを代表する高級赤ワインで煮込んであるそうです。
ナイフを使わなくても食べられるぐらい柔らかく煮込んでありますよ、と言われ、本当にその通りでした。

そして、デザート。デザートだけで3皿も!

1つめのデザート(プレ・デザート)。シャーベットだったと思います。

2つ目のデザートのこれがすごかった。桃がまるごと載っているようですが、、そうではなくて、桃を模したドルチェで、中にはムース。桃の皮の濃淡まで表現されているのもすごいです。

3つ目の、〆のドルチェ。

 

1986年生まれの若いシェフ。師はイスキア島のレストランに。

食事が終わると、各テーブルを Emanuele Petrosinoシェフがあいさつに来ました。

ずいぶん若いなと思いましたが、後でホテルサイト内にあるシェフの経歴を見ると、1986年生まれ。

生まれはラツィオ州のラティーナ。フランス、ピエモンテ州アルバ、ナポリのレストランなどを経て、ここ「Ristorante i Portici」のシェフに。

コースの中で、あまりにも超基本パスタ過ぎて珍しいなと思った「5種類のトマトの太麺スパゲッティ」。メニュー名には、

Spaghetto ai qinque pomodori,
(5種類のトマトの太麺スパゲッティ)

の後に、

omaggio al mio maestro Nino di Costanza
(私のマエストロ、Nino di Costanzaシェフへのオマージュ)

と書いてあります。

これを書く段になって調べてみると、彼のマエストロであるNino di Costanza氏は、ナポリ・イスキア島のレストラン「Danì Maison」(ミシュラン2つ星)のシェフでした。

このNino di Costanzaシェフについて検索してみると、出てきた記事の一つの見出しが、

「私は、アンチ『スターシェフ』。テレビには出ない。私の土地の食文化を守るだけ」

かなり硬派な人物のようです。

大変、大変失礼な言い方なんですが、シェフがテーブルに挨拶に来てくれたときの印象は、ちょっとキレ者に見えないと言うか、ぬぼぉとした感じでした。

正直、この人がこんな料理を作り出すんだ、というギャップがありました。でも、そう見えないのが何だかカッコイイなとも思って、ずいぶん印象に残りました。

そして調べてみると、こういった硬派な人物を師と仰いでいるということも分かり、ますます興味を持ちました。

またいつか、もう1回このシェフの料理を食べに行って、もう少しよく話してみたいです。

(おわり)