201X年12月、パリ空港で2日足止め
日本帰国時に利用した、パリ→成田のANA便。一度は搭乗したものの、機材損傷により乗客全員降ろされ、振替え便が手配されるまで2日間パリのホテルに足止め、といことがありました。
けっこう前のことなのですが、昔のiPhoneのデータを整理していたら、当時の写真が残っていて、見ているうちに振り返ってみたくなりました。
NH206便の臨時便ということで、NH9206便の表示
ことの概要は、
- クリスマスシーズン、パリ19時55分発の成田行き全日空便。
- 欧州に寒波到来も、パリ空港は大きな乱れなし。ほぼ時間通りに搭乗。
- 滑走路を走行中、エンジンカバーが表示灯に接触、損傷。その整備で3時間以上待機。
- 結局、修復できず、乗客全員降機。
- 現地スタッフの手配で、ホテルへ。
- ホテルに1泊後の翌日も、振替え便の手配が整わず、もう1泊。
- パリに2日足止め、52時間遅れで成田到着。
- 成田空港に到着すると、簡易デスクが設置され、諸費用の精算。
- 後日、同じホテルに宿泊した乗客約20人連名で、全日空カスタマーセンターに要望書。
- 結局、対応は個別になされ、自分は「日用品購入の代金も含めた補償1万円」
ポイントとしては、悪天候による遅延ではなく、飛行機の一部を滑走路の表示灯にぶつけたという人為的ミスによる遅延であることかと思います。
後日、カスタマーサポート部の担当者からも「今回は全日空の100パーセント全責任です」という説明も。
搭乗は定刻通り。離陸前に「地上」で機内食
この年のクリスマスシーズンは欧州に寒波が到来、滑走路には雪が残り、ところどころ凍結。が、ダイヤが乱れて大混乱とかではなく、搭乗時間もほぼ定刻通り。
ドアも閉まり、ちゃんと動き出しました。駐機エリアから、滑走路に入り、これから離陸のはずが、ずいぶん長い時間、滑走路をぐるぐるしています。すると、、、
で、たしか1時間近く機内で待ちました。すると今度は、、、
ということで、離陸していないまま「地上」で機内食を食べることに! 今、思えば、この段階で、もう運航できないということは分かっていたのかもしれません。食べ終わってから、さらに30分以上待機。そこで再度アナウンス。
パリ市外、数カ所のホテルに振り分け
乗客全員、飛行機から降り、再び空港ターミナルへ。そこで、地上スタッフから説明。理由は終始「機材の損傷」だったように記憶。時間はもう24時過ぎ(出発予定時刻は19時55分。
「振替え機材の手配がつくまで、空港近くのホテルへ」ということで、数カ所のホテルに20人ぐらいずつに分かれて、移動。(自分が泊まったのはこのホテル↓でした)この時点では、まだアクシデントを楽しめる余裕があって「まぁいい経験だし、1日ぐらいいいか」と思っていました。
振替え便が整わずホテルに足止め2泊目
運航中止により、ホテルで一夜を過ごし翌日。朝11時頃に、全日空パリ支店のスタッフより振替え便の手配についての連絡がある、ということでホテルのロビーに集合。
当然この日には帰国できるものと思っていましたが、、、
このホテルに滞在していた乗客は全員、足止め決定。ホテル2泊目決定です。
ここが「分岐点」だったと思います。1日の遅延であれば、多少の不満は残るでしょうが、後日、連名で要望書を送るまでこじれることはなかったはずです。このあたりから、乗客の間に、対応への不信感とフラストレーションがたまり始めました。
3日目に振替え便確定。出発までパリ市内「ツアー」
3日目の朝、再び、全日空スタッフがホテルにやってきて、同日22時発の振替え便が手配できたという連絡。
しかし、まだ朝ですから、半日以上時間があります。このホテルはパリ市外の辺鄙なところにあって、周りに何もなく、市内に出るには電車を使わなければなりません。
スタッフ同行のもと、午後はバスでパリ市内へ移動、食事の後に「自由行動」、その後空港へ、という段取り。
この年のクリスマスシーズンのパリは極寒
このように書くと、「さすが日系の会社。そこまでしてくれるんだ」という感じがしなくもありません。が、この時の乗客の大半は、そもそもパリ観光に来た人、現地在住者などで、「今さら観光して半日過ごすより、少しでも早く帰国したい」という心情です。
乗客としては、悪天候による欠航であれば誰の責任でもない「不可抗力」で、ホテルまで用意してもえらば有難いぐらいですし、食事内容にまで注文をつける筋合は全くないです。
ですが、「飛行機を表示灯にぶつけて損傷」という航空会社側の人為ミスが原因で、それでも1日遅延ぐらいなら不満が噴出するようなことはないはずですが、2日間足止め。そこでもって、「パリ市内でも美味しいと評判の中華料理屋へ」(←こんな言い方しなければいいのに、と思います)と案内されたのは、いかにもパッとしない店。。
この段には、乗客の間から、帰国したら全日空社に連名で補償をちゃんと要求しよう、という声があがっていました。
とは言え、現地スタッフも大変です。本当にそう思います。別の現場で起きた、自分たちが起こしたわけではないトラブルのフォロー。それも海外支店業務の一環なのでしょうが、さらに苛立っている乗客の矢面に立って対応をしなくてはなりません。。
でも、対応が良かったら「この人たちのせいではないのに大変だな」と感じるのが人情なので、結果的に「現地スタッフの皆さんも大変ですね、ご苦労様です」とはならず、不満が噴出していったのはやはり対応を誤ったということになると思います。
52時間遅れで成田に到着
機内では、別のホテルに宿泊し同じように2日足止めとなった乗客と、情報交換がされました。翌日に帰れた乗客もいる、別のホテルでは出発直前までホテルの部屋を使用できた、、等々。
空港に到着すると、地上スタッフが簡易デスクを設置していて、、、
というような話だったと記憶しています。
自分としては、2週間という限られた一時帰国の期間が2日減ってしまったわけで、金銭的な損害よりも時間の損失が大きく、主張はするだけして補償をもらおう、というタフさも持ちわせていないので、スルーして帰りました。
20人で連名要望書を提出
年が明け、同じホテルに宿泊した乗客約20人で、全日空に要望書を提出することに。
取りまとめをして下さった方が、まず、カスタマーサポート部に連絡をとられて、担当責任者から最初の回答がありました。
この後、20名それぞれ要望書を書き、それをまとめて郵送。カスタマーサポート部の担当者が、20名それぞれ個別に対応し、補償内容も人によって違うものだったかもしれません。
自分も要望書を書きました。具体的な金銭的損失があったわけではなかったので、その要求はしなかったのですが、、
話の本筋とはずれるのですが、回答の文面の精度に感心してしまいました。少しでも読み手の気に障ることがないように、細部まで配慮された言葉遣いと言い回し、肝心の質問に対しては、何となくはぐらされているのに、それでいて「そう答えられたら仕方がない」と思わされるような模範的な答え方。クレーム対応の見本のような文章でした。
教訓的なものがあるとすれば、、
けっこう前に起きたことなのに、こんなにダラダラと長く書けてしまうほど、自分にとってはかなり遺恨の残る出来事でした。この後、2年ぐらい全日空を利用しませんでした。そんなことしても無意味なのですが、心情として。
で、今後も間違いなく飛行機を利用していく自分への教訓的なことがあるとすれば、、
- 航空会社の権利は、乗客のそれよりずっと強い。例えば、極端な例が、ユナイテッド航空の引きずり降ろし事件。日系では起きないでしょうが、他の交通機関と比べて、乗客は航空会社の言われるがままになることが多いように思います。新幹線が遅延した場合、悪天候はJRの責任でもないのに、2時間以上なら特急料金を返金という、すっきりしたルール。航空会社の場合、100%会社に責任がある遅延でも(この時の一件がそうでした)、運賃の一部が返金されるというルールにはなっていません。
- 遅延そのものに対する補償というものは無いらしい。遅延によって被った具体的な損害、出費を、個別に要求して補償を請求するというのが、このときの流れでした。よって、人によって補償内容も異なってくるはずです。クレジットカードに付帯する「航空便遅延保険」にしても、遅延そのものに保険金がおりるわけでなく、例えば4時間以上の遅延だったら、その待ち時間の食事の費用を2万円まで補償します、といった仕組み。
- 上級会員であれば優先的に振替え便も手配されるのか?は、結局よく分かりません。カスタマーサポートに出した要望書の中で、どのような条件の乗客を優先して振替え便の手配をするのか、今後のためにその基準を聞きたい、と書きました。回答は「振替対応につきましては、自社および他社の空席状況、ご利用クラスならびに航空運賃をもとにご案内の順序を決めて対応致しております」という模範的なもの。結局よく分かりません。まったく同じ条件の客がいたら、そこからは航空会社側の判断ひとつなわけで、やはり航空会社の権利は、乗客のそれよりずっと強いのだと思います。
(おわり)