フィレンツェでちゃんとした朝食(=パン&コーヒー)が食べられそうな店をイタリア語で検索していて、目星をつけておいた店。
「オーストリア人のRainer氏が2011年に開業した本格オーストリアンスタイルのカフェ。フィレンツェで最もおいしいコーヒーの1つ」といった内容のレビューをいくつか読みました。
仮にオーストリア料理であったら、わざわざフィレンツェで食べる必要はないのですが、「オーストリアンカフェ」となると話は違ってきます。イタリアのバールという形態は立ち飲みでサッと済ますのが主で、腰を落ち着けて本や新聞を読んだりして長居するような「カフェ」はほとんどありません。
その点、オーストリアには名高いカフェ文化があり、基本的に着席仕様でゆっくりするイメージがあります。実際、ウィーンのカフェを2店ハシゴしたときも、わりと慌ただしい雰囲気のイタリアのバールとは別空間で、擦れた言い方ですが「時間の流れ方が違う」という感じが確かにしました。
そして、定評あるオーストリアのスイーツ。私は、自分が暮らしているのでイタリア贔屓ではありますが、コーヒーは互角、スイーツ類はオーストリアの方に軍配が上がると思っています。
そんなわけで、フィレンツェでわざわざオーストリアンカフェ、というのも全然ありだと思い、行ってみることにしました。
店名:Caffè Rainer
場所:Firenze S.M.N駅から1,2km
住所:Via S. Zanobi 97/R, Firenze 50129 (Googleマップで)
開店時間:朝8:00〜(Facebookページで最新情報を確認できます)
サイト:www.pasticceriaaustriaca.it
種類豊富なクロワッサン
イタリアの普通のバールではクロワッサンは、ジャム入り、チョコ入り、クリーム入り、プレーンなど、せいぜい3、4種類ですが、ここには10種類近くあり、この店で作っているクロワッサンと焼き菓子の主要ラインナップを載せた小さいパンフレット(↓写真)のようなものまで。
イタリアは美食の国を自認するわりに、パンへの意識が低く、工場生産したようなクロワッサンを出すバールが大部分です。
私は、日本では町にある普通のパン屋で十分に満足でき、パンへのこだわりが強いわけでも何でもないのですが、それでもイタリアの普通のバールで出されるパサパサのクロワッサンはあまり食べる気がしません。
注文したのはリンゴジャム入り全粒粉クロワッサンとカプチーノ。銀のトレーにのせてくれるのもおそらくオーストリアンカフェスタイル。表面のパリッ&中のしっとり。私などはこれでもう満足できてしまいます。あと、バターのいい香りがしました。
先述のパンフレットには、
- 保存料、香料などは一切使用せず、毎朝20種類近くのクロワッサンを焼く。
- マーガリンは使わず、高品質のバターのみ。
- 18時間発酵させているので、消化がいい。
- 砂糖の量を抑え、デリケートな味に仕上げる
といった説明。「18時間発酵」という部分は、「約」とか「前後」と書いておらず、きっちり18時間。
パン好きの人が食べれば、そのあたりの違いも感じられるのかもしれません。
ザッハトルテやシュトゥルーデルも
店内の雰囲気は、やはりバールではなくカフェ。9時頃入店でお客さんが一人もいなかったのがちょっと気になりました。ガラスケースの中にはオーストリアらしいスイーツも。中央の奥は、ザッハトルテ。その右隣は「Topfen strudel」。その他のも自分が知らないだけで有名なケーキなのかもしれません。
「Topfen strudel」は、後で写真を見て気づいたのですが、イタリアのドルチェの中でたぶん一番好きな、リンゴのStrudel(写真↓)の仲間。リンゴをクレープのような生地で何層にも包んで焼き上げたもの。オリジナルはオーストリアですが、オーストリアとの国境の州、アルト・アディジェの名産でもあり、一応イタリアのドルチェでもあるのかな、と。
調べてみると、「Topfen strudel」というのはリンゴのかわりに「Topfen」というチーズが包んであるよう。このとき気付いていれば、朝でも構わず試していたのですが、次回への宿題に。
厨房からコック帽のオーナーが。
店に入るとすぐ右にガラスケースとレジがあり、その奥に女の子が一人。おそらくアルバイトの子で店のオペレーションをすべてやっています。店内からは奥の厨房が見えないので、はじめは本当にその場で焼いているのか少し疑ってしまいましたが、アルバイトの子がしょっちゅう厨房にいる誰かと会話しており、私が店を出る頃に一度だけ、奥から長いコック帽をかぶった人が出てきました。
コック帽にレストランのシェフのような白衣まで着ており、おそらくオーストリア人のオーナー。
イタリアの、パン・焼き菓子店「パスティッチェリア」の人たちは、もう少しくだけた作業着を着ている印象があるので、カフェでパリッとした格好にコック帽までかぶった人が菓子を焼いていると、本格派という感じがしていいなと思いました。
(おわり)