ベネツィアの「バーカロ」を説明するとき、形態としては(ワードとしてはおじさん臭いですが)ちょい呑みの店というのが合っているような気がします。「バーカロ」を居酒屋と紹介しているガイドブックもありますが、つまみを数品だけとり軽く一杯、小一時間程度で引き上げる、という使い方をしているようなので、やっぱり、ちょい呑みをする立ち飲み屋、という感じです。
観光スポットに近いバーカロ3店をハシゴ
ベネツィアに行ったら美味しい海鮮料理の店で食事したい、となります。自分ももちろんそうです。
でも、夕食前ちょっと小腹が空いたときや、軽めの昼食にしたいときなど、このバーカロを利用してみると楽しいと思います。
「ちょい呑み」に似ているといっても、形態として近いだけで、ローカルのおじさんだらけというわけではなく、若い人や外国人観光客も多くいました。
リアルト橋
アカデミア美術館
サン・マルコ広場
代表的な名所であるこの3スポットそれぞれに近いバーカロ3店をハシゴしました。
①リアルト橋の近く「Osteria Bancogiro」
住所:
リアルト橋を渡ってすぐ、30mぐらい、というロケーションの割には外国人観光客が少なく、若いイタリア人が多かったという印象。2階はレストラン、1階はバーカロという店。どこのバーカロもそうですが、店内は狭いので、外で立ち飲み。
こんな状態で注文できるのか?、というほど入口付近に人が固まっていますが、奥の方まで進んでいき、店員にオーダーできるポジションを確保します。つまみの注文はガラスケースに並んでいるものの中から指差しでもOK。
ケース内中段の、
左「Baccalà mantecato」(干し鱈のクリームペースト)
中央「Sarde in saor」(イワシ南蛮漬け)
を注文すると、それをパンの上にのせてくれます(↓写真)。パンの上に惣菜というこのパターンが、定番のつまみのようです。鰯の南蛮漬けのほうは、パンなしで惣菜として一皿もらいたいぐらいでしたが、初めて入った店なので出しゃばらず。その他、寸評、まとめとしては、
- イタリアの店の常で営業時間がはっきりしないが、おそらく昼休みなしで営業。
- 場所も、観光客なら一度は渡るリアルト橋からすぐなので、気軽に立ち寄れる。
- ロケーションの割には、地元の若い人も結構いるという印象。
- 店員は、勝手があまり分からない外国人観光客の自分にも感じがよかった。
②アカデミア美術館の近く「Osteria al Portego」
住所:Calle De La Malvasia 6014 (Googleマップで)
ホームページ:www.osteriaalportego.org
中心から外れのほうにあり、今回ハシゴした3店の中で、立地的には最も穴場感があるものの、外国人観光客がたくさんいました。
アカデミア美術館に行く途中、運河沿いにできていた行列と人だかりを見に行ってみて、発見した店。この↑状態は、日曜日の14時ちょっと前。15時過ぎにもう一度来てみると、行列はなくなっていましたが、店内はまだ混んでいます。つまみは、自分の前の人が注文したところで完売してしまいました。店員に、後から補充されるのか聞いてみると「17時まではない」とのことだったので、オリーブとプロセッコ(ヴェネト州産・白の発砲)だけ注文しました。店内は可愛らしい雰囲気で、一応座る席もありますが、店の目の前の運河沿いで、ベネツィアらしい景色を楽しみながら立ち飲みするのが、この店の醍醐味のようです。その他、寸評、まとめとしては、
- とにかく混んでいるが、がんばって飲み物とつまみを確保して外でのんびりするのが良さそう。
- 外で飲む場合はグラスでなく、プラスチックのコップ。
- 若い店員は外国人観光客にも慣れていて、英語でも問題ない。
- ホームページ記載の営業時間は、10:30〜14:30、17:30〜22:30。(でも自分が行ったのは日曜の15時過ぎなので、やっぱりよく分かりません)
③サン・マルコ広場の近く「Bacaro Risorto」
住所:
サン・マルコ寺院の裏手、徒歩5分という立地。しかも分かりにくい裏路地とかではなく、観光客がたくさん歩いていて、ツーリスト向けレストランが連なる通りに、こんなにオーセンティックなバーカロがあるのですから、ベネツィアは本当に奥が深いです。イタリア人のフードブログで知ったのですが、場所が分かりやす過ぎるし、まわりのツーリスト向けっぽい店に紛れているしで、知らなかったら絶対入らなかっただろうなと思います。
ベネツィア地方は訛りが独特ですぐ分かるのですが、この店では店員と客の間で、ベネツィアの方言が飛び交っていました。今回ハシゴした3店の中で最もローカル率が高かったような気がします。
例によって店内は狭いですが、イタリア人は基本的に外での立ち飲みを好むので、意外と店内に場所が空いていたり。つまみのクオリティが高いです。↑写真左が定番の干し鱈のクリームペースト「Baccalà mantecato」、右が肉団子揚げ「Polpette di carne」。
すぐに平らげてしまい、追加のつまみを物色。追加で頼んだのは、
Gamberi in saor(海老のマリネ、↓写真)
ベネツィアの定番惣菜
Sarde in saor(鰯のマリネ)
との違いは、鰯が海老(gamberi)になっているところ。これがおいしかった!
ここも営業時間がよく分からないのですが、どうやら昼前からやっているようです。
こういう地元客が多い店では、外国人観光客は疎まれても仕方がないと自分は思うのですが、ここの店主と思われる人はとても親切で感じが良かったです。
肉団子を注文した時のこと。「電子レンジで温めてあげるから少し待って」と言われたので、自分の場所を確保しワインを飲みながら待っていました。
次々と客が入ってきて注文するので、忘れ去られてしまう、というのがありがちな話ですが、この店主は時々自分の方に目をやって「忘れてないから、もうちょっと待って」と合図をくれました。
こんな気遣いだけでも、「よそ者」の自分には有り難いものでした。
バーカロでの注文の仕方や用語など
カウンターの中にいる店員に直接注文します。
混雑時は入口付近で立ち飲みしている人が妨げになったりで、諦めてしまいたくなるぐらいカオス化していることもありますが、とにかく頑張ってカウンターまでたどり着きます。
何とかカウンター付近にポジションを確保しても、カウンターを取り囲むたくさんのお客さんの誰から注文するのか、順番がどうなっているのか分からないことも多々。秩序を好む日本人には何ともいらいらしてしまう状況ですが、辛抱強く自分のターンを待ちます。
店員がこちらを向いてくれたら、注文は英語でも指差しだけでも何とかなります。飲み物とつまみを数品注文。
知っておくと便利そうな基本用語としては、
cichette(チケッテ) スペインのタパスのようないわゆるおつまみ。今回の3店では、どこもパンに惣菜がのったタイプでした。
ombra(オンブラ) 単純にグラスワインのことをベネツィアではこう呼ぶようです。これを頼むと、ハウスワイン的なものが小さいグラスで出されます。
prosecco(プロセッコ)これは用語というわけではなく、イタリアを代表する白の発砲ワイン。イタリア全土で食前酒の定番として飲まれていますが、生産地はヴェネツィアがあるヴェネト州。
spritz(スプリッツ)これもイタリア全土に普及している食前酒の定番。「Aperol」などのリキュールを先述のプロセッコで割ったもの。これも起源はヴェネト州のようです。今回巡ったバーカロで、地元の人はこれを飲んでいる人が多かったです。
(おわり)