【フィレンツェ】下町大衆食堂なトラットリア「Sabatino」 

フィレンツェの大衆食堂「Trattoria Sabatino」について、です。

イタリアの観光都市では、庶民的「風」、家庭的「風」なトラットリアは結構ありますが、ここは「風」ではない、オーセンティックな大衆的トラットリアだと思います。

その作り物ではない「オーセンティック感」、何がそう感じさせるのか考えてみると、

  1. 毎日替わる紙切れ1枚のメニュー
  2. リラの時代のような価格設定
  3. 装飾品が少なめの簡素な内装
  4. 家族経営、プラスアルファ程度の従業員
  5. 常連の老紳士、老夫婦をもてなす店員
  6. 中心街から少し離れていて観光客が少ない ← 2019年9月の再訪時は20時には行列ができていた

店名:Trattoria Sabatino
場所:ヴェッキオ橋から1,1kmにある「Porta San Frediano」という門のすぐ脇
住所:Via Pisana 2/r, Firenze 50143(Googleマップで
サイトwww.trattoriasabatino.it

 

注文した料理はミネストローネとリヴォルノ風カツレツ

まずは、この日に注文した料理の写真。テーブルの上に、紙切れ1枚のメニューが置いてあります。メニューには日付けが書かれていて、毎日替わるとのこと(イタリア語表記のみだが、英語で説明してくれる店員も)

Minestrone di fave con pasta ソラマメのミネストローネ 4,3いろいろな野菜が刻み込まれているものを想像していましたが、野菜の具はなく、入っているのは極小のパスタだけ↓。マメが溶け込んでいるのでトロミがあります。

 

Braciole alla Livornese リヴォルノ風カツレツ 「braciole」という料理は肉巻きだと思っていたのですが、調べてみると地域によって違うよう。これは、トスカーナ州の港町・リボルノ風「braciole」。

2皿目は結構迷ったのですが、アタリを選べました。会計時に聞くと、だいたい1週間に1回はこれがメニューにあがるとのこと。食べる前のきれいな状態で写真を撮っておこうと思ってそうしたのですが、衣にソースが染み込んでふやけているのでぼろぼろに。。

 

Vino 1/4 ハウスワイン1/4リットル €1,4メニューには「Vino 1/4」と書かれているだけで、口頭で赤か白を伝えます。デキャンタは、ハーフリットルや1リットルのものもあるはずです。ワイングラスでなく、コップで飲むのがなんとも味があります。

会計は、

ミネストローネ 4,3
カツレツ 
ワイン €1,4
合計 11,7

強烈な価格設定。今まで行ったトラットリア(フィレンツェに限らず)で、2皿とってこの価格は見たことがありません。

ユーロが導入される前のリラの時代を知っているイタリア人が、ユーロになってから物価が2倍になった、とこぼすのを時々聞きますが、このトラットリアはまるでそのリラの時代の価格を守っているかのような感じさえします。

 

簡素で清潔、標準的な広さに詰め込みすぎていないテーブル

価格が強烈過ぎたのでそれを先に書きましたが、印象に残ったのは、過剰な装飾がない食堂風のすっきりした店内、そして設備は新しくないもののきっちり手入れされている清潔感。イタリアの飲食店は総じて衛生面は良好ですが、ここは特に気をつかっている感じがしました。テーブルから見える厨房は整然としており、トイレなども結構古いタイプなのに掃除が行き届いていました。店内は標準的な広さですが、テーブルを詰め込み過ぎていないので、テーブル間の距離が十分に保たれています。テーブルを詰め込み過ぎている店だと、ゆったりとできないし、混雑時には声を張り上げないと会話できないような状態になってしまうこともあるので、個人的には重要な点だと思っています。ただ、大きめのテーブルが多く、1人のときはもちろん、2人で行っても相席になることが多そうです。

 

家族経営。常連をもてなす店主。

店員の構成をみると、明らかに家族経営の店。プラス、従業員とコックを何人か雇っているようです。

創業xx年の老舗を謳うトラットリアの中には、創業当時こそ家族経営だったのでしょうが、その感じが失われてしまって、老舗を売りにした商売っ気しか感じないようなところもあります。

、、と書くと、ずいぶんエラそうな感じになってしまうのですが、単純にそういうのは価格設定に反映されていると思っています。

その点、この店は先述の通り、創業当時(1956年)のままなのでは?と思うほどの価格設定ですし、従業員を雇いすぎていないところも、家庭的な雰囲気が残る理由になっている気がします。私が入店したのは12時過ぎ。すぐ後に、写真右↑の老紳士と、中央の老夫婦が入ってきました。

ホール担当は若い男性で、私の注文をとってくれたのも彼でしたが、この老紳士の場合、オーナー家族のおかみさん自らテーブルまで案内し、日替わりメニューについても丁寧に説明していました。

写真中央の老夫婦も常連らしく、厨房の中からコックが声をかけたりしていました。なかなか素敵な光景です。

 

観光客的にはどう攻略するか

地元の人にとっては、素朴な家庭料理を手頃な値段で提供してくれ、こんなに心強い店はないはずです。

ただ、私のような観光客としては、せっかくだからトスカーナらしい料理を食べたいわけで、この日のメニューの1皿目は、

かぼちゃのリゾット、ミネストローネ、ラヴィオリ、タリアテッレ

と、どれが「らしい」のかちょっとわかりませんでした。この店での勝負は2皿目と言えそうです。すべて肉料理。

メニュー名に町の名前が入っているとすぐ郷土料理だと分かるので「Braciole alla Livornese」を選択。先述の、トスカーナ州の港町リヴォルノ風カツレツ(↑写真内「メーンの肉料理」の項目の3行目)

メニュー内「メーンの肉料理」の1行目と2行目、

Pollo lesso 1/4 con salsa verde
Lingua lessa con salsa verde

「lesso/a」は、ボイルした肉。これをグリーンソース(salsa verde)で食べるのも、トスカーナ料理だと思います。2行目の「Lingua」は牛タン。

メニューの右側「付け合わせ」は、サラダ(insalata)がたくさんありますが、こういうのはレストランでなくても食べられそうです。トスカーナ料理ではありませんが、ジャガイモをオーブンでグリルした「Patata arrosto」なんかは定番で肉料理にも合います。

メニューに英語表記はありませんが、ホール担当の若い男性は英語でもメニューを説明してくれます。

 

下町の大衆食堂

テーブルの上に、本の表紙が拡大コピーされて置いてありました。題名は、まま店名。「Maschietto Editore」という地方出版社から2016年刊行。

副題は「フィレンツェの下町・San Fredianoの大衆料理とある家族の歴史」。

たしかにこの店の周辺は、華やかな中心街に比べるとだいぶ生活感があり、昔はもっと下町らしいエリアだったのかもしれません。そんな地域のトラットリアなので、やっぱり「下町の大衆食堂」というイメージがぴったりの店です。

(おわり)