イタリアンポップスの至宝、チェーザレ・クレモニーニのコンサート@サンシーロスタジアム

チェーザレ・クレモニーニは、1980年生まれ、ボローニャ出身の歌手。

父は医者、母は大学教授という家庭で育ち、幼少時からピアノを習いクラシック音楽の素養を身に付ける(今でもピアノ弾き語りの曲が多数)。

11歳のクリスマスに、父親からクイーンのアルバムをプレゼントされ、徐々にポップとロックミュージックに傾倒していく。

主にショパンやベートーヴェンを弾いていたが、父にプレゼントされたクイーンのCDを聞いていると、クラシック音楽からの引用にあふれていることに気づいた。そしてピアノの先生に「ボヘミアンラプソディ」を教えてほしいと頼んだ。

その3年後、両親と一緒にバカンスを過ごしているとき、初めての曲「Vorrei」を書いた。当時15歳。

今でもコンサートの中盤から終盤にかけて、この「Vorrei」がピアノ弾き語りで歌われると、コンサートのテンションと会場の雰囲気ががらっと変わるような曲調。女性ファンが一番うっとりする曲。

高校在学中に、クラスメートとバンドを結成。地元ボローニャのフェスティバルなどで、レディオヘッド、オアシス、クイーンの曲とともに、オリジナルの楽曲も演奏していた。

バンド結成から3年後の1999年、メンバーの一部を入れ替え「Lùnapop」というグループ名で「50 Special」をリリース。社会現象となる大ヒット。

イタリアでは知らない人はいないほどの曲で、今でもコンサートでこの曲になると尋常じゃない盛り上がりを見せる。

曲名の「50 Special」は、スクーター「Vespa」のモデル名。Vespaに乗ってボローニャの丘を走るのは何て素晴らしいんだろう、といった歌詞の内容。

あるインタビューでこの曲について、こんなエピソードを披露。(うろ覚えですが、こんなような内容↓。結構いい加減かもしれません)

デビュー曲のことは両親には内緒にしていた。CDが発売されてすぐの週末、いつもの習慣で両親と一緒に祖父母の家へ行く途中、ボローニャの「*Ricordi Mediastore」の前で車を止めてくれるように頼んだ。一人で車を降りてCDを買ってきて、その場で両親にプレゼントした。
*レコード店。2016年閉店

同年1999年の11月、Lùnapop として最初で最後のアルバム「…Squérez?」を発表。2000年6月からは13週連続でヒットチャート1位。

同アルバムの曲は、1曲以外は全て、チェーザレが15歳から18歳のときに書いたもの。

2002年の「Lùnapop」解散後、シンガーソングライターとして活動。

「Lùnapop」メンバーの一人、ニコラ・バレストリもベーシストとして活動を続け、今でもチェーザレのコンサートに必ず帯同する盟友。

ソロ歌手として、現在までに7枚のアルバムを発表し、キャリアを重ねる。

2013年にはヴェローナのアレーナ(↑写真、古代ローマの円形競技場)コンサートを成功させ、2017年、満を持して「スタジアムツアー 2018」開催を発表。

2018年6月に、
ミラノ・サンシーロ、
ローマ・オリンピコ、
ボローニャ・レナートダッラーラ
の3スタジアムでコンサートが行われた。

 

サン・シーロスタジアムのコンサートに行ってきました

その3スタジアムツアーの1つ、ミラノ・サンシーロを見てきました。

サッカーのACミランとインテルのホームスタジアム。最上階席だったので、ステージはよく見えませんが、ぎっしり埋まった観客席の様子が一望できて迫力がありました。

コンサートの中盤でバンドメンバーがはけて、チェーザレがステージ上のグランドピアノで弾き語りをする独演タイムがありました。

「Vieni a vedere perchè」という曲で観客は最初から一緒に合わせて歌います。

そして、途中からチェーザレが歌うのをやめ、ピアノ演奏も止めると、スタジアムに観客だけの合唱が響きます。それが30秒近く。サッカー観戦のときの地鳴りのような大歓声もすごいですが、それとまた違う体験でした。ある曲になると、ファンがスマートフォンのライトを点灯させ、左右に振ります↑。日本のサイリウムのような感じ。

この日は、「Lùnapop」時代からのチェーザレの盟友、ベーシストのニコラ・バレストリの誕生日だったようで、終盤のMCでチェーザレがステージ中央にニコラを呼び、ファンも一緒に「ハッピーバースデー」を歌いました。この日に誕生日とは、持っていますね。

セットリストは、自分が好きな曲「Dicono di me」が外されていたのがちょっと残念でした。

 

育ちの良さとまっすぐな歌詞

この人を見ていると、やっぱり「育ち」って大切だなと思います。

本当に育ちのいい人だけが持っているまっすぐさ。普通の人は逆に恥ずかしくなってしまうような。ジャンルは違いますが、松岡修造的なものです。

いくつかの曲の歌詞の内容はどストレートなラブソングで、ひねくれたところ、裏や影がない人間性がよく出ています。

ある友達に聞いてみると「自分の好きなジャンルの音楽ではないけど、人としてとても好感が持てる」。

そんな人物です。

そして、幼い頃からクラシック音楽の素養を身につけ、作詞作曲も手がけ、敬愛するミュージシャンはクイーンという王道感。作る曲も聞く人を選ばないメジャーど真ん中をいっています。

ポップ界だけでなく、イタリア音楽界の至宝。

Eテレのイタリア語番組のエンディングあたりに使われてもおかしくないと思うのですが。。

(おわり)