日本では、イタリアとほぼ遜色ないレベルで大部分のイタリア料理が食べられますが、モッツァレラ・ブッファラ、パルミジャーノチーズ、生ハム・サラミ類に関しては輸入するしかないわけで、当然コストがかかり、イタリアの数倍の値段を出してもわずかな量しか食べられない。
あのサイゼリヤでさえパルマの生ハムが、メニューの写真によると、3切れで399円。ちゃんとしたイタリア料理店で、生ハム・サラミ盛り合わせを頼んだら、2000〜3000円はくだらない。
そんな生ハム類を食べ放題状態で食べられる店が、エミリア地方の小都市モデナに。
揚げパン&生ハムの食べ放題
↑↑この写真のメニューが、ワインを除いて実質的に食べ放題。この生ハム盛り合わせを2人で2皿食べて、1人約20ユーロ。
ボローニャから電車で25分、フェラーリ本社とバルサミコ酢で有名なモデナという街で、「ニョッコフリット&ティジェッレ」と呼ばれている郷土料理。
写真上部の白い焼きパンが「ティジェッレ」、中央の揚げパンが「ニョッコ フリット」。これを生ハム類やチーズ(写真右下はストラッキーノというチーズ)と一緒に挟んだりしてひたすら食べる。
ニョッコ&ティジッレとは
ティジェッレ↓↓は、小麦粉を練って焼き上げただけのようなシンプルなパン。モデナの名物料理で、家庭でも専用の焼き器で作る。
ニョッコフリット↓↓は、薄生地の揚げパン。一見ボリューミーだが、中は空洞になっていて、上手な店だと生地が薄く、見た目の印象より重くなく食べやすい。モデナでは「ニョッコ フリット」と呼ばれているが、他の地方では似たような揚げパンに別の呼称がつけられている。
モデナの名物料理といっても、市内中心部(チェントロ)のどこのレストランでも出しているわけではない。
一部のトラットリアで、メニューの前菜(antipasto)として「gnocco」か「tigelle」を出している。両方一緒の場合もあるし、どちらか一方の場合もある。たいてい、生ハム盛り合わせと一緒になっていて、例えば「Taverna dei Servi」(住所:Via dei Servi 37, Modena 41121)という店では、メニュー表記は、
Affettati misti e gnocco fritto
「misti」は「ミックス」の意味で、生ハム類のミックス=盛り合わせなので、このワードを頼りに探すこともできる。
本題:生ハム食べ放題店の様子
先述のように、モデナ中心部の一部のレストランでは「生ハム類&ニョッコ&ティジェッレ」をメニューの一部として提供しているが、郊外や山間部へ行くとこれを専門に出す店がある。
今回行ったのは、市内から2キロ、少しだけ郊外にある専門店。
- 店名:Trattoria Madonnina
- 住所:Via Sandro Cabassi 58, Modena 41123
- 行き方:市内から4番バスで行けるが、ドゥオモからでもタクシーで約10ユーロ
- 営業時間:月〜土、19時〜24時
店構えと入り口はこんな感じ。看板の店名下の「GNOCCO & TIGELLE」の表記が頼もしい。
店内は、山の中のコテージのような素朴な作り。イタリアの夕食は基本20時からなので、入店した19時15分はまだ誰もいないが、テーブルは予約客用にセッティングされている。この後、7〜8名のグループ2組と、夫婦と子供連れ1組で、この部屋は満席に。
席に着くと、店の人が飲み物のオーダーをとりに来る。ここはマストで、発泡赤ワイン「ランブルスコ」を。ただでさえ重めの揚げパン&味の濃い生ハムに、飲み口が爽やかな発泡の赤が異常に合い、食が進む。ランブルスコにも種類があり、どれにするか聞かれるが、色が濃くてコクがある「Grasparossa(グラスパロッサ)」がオススメ。
ここに来る人は皆これを食べに来るので、食べ物のオーダーについては特に必要なく、念のため「ニョッコ、ティジッレ」とだけ言えばOK。
一律料金でぼぼ食べ放題のようなシステムで、しばらくすると、ニョッコフリット(写真右の揚げパン)、ティジェッレ(写真上の丸いミニ焼きパン)、生ハム盛り合わせ、ストラッキーノチーズが、この写真↓↓のように一緒に運ばれてくる。盛り合わせは4種類で、皿の下部からサラミ、生ハム、モルタデッラ、コッパ。
★この店では、写真にはないが、これに加えて鶏肉料理と豆スープもメニューに含まれていて、注文しなくても出てくる。ニョッコ&ティジッレに集中したい場合は、最初に言っておけばパスすることもできる。
パンにナイフを入れハムを挟んだりしてひたすら食べる。小さいガラスの器に盛られてくる白いペーストのようなもの(↓写真左)は、豚の脂身ことラード。ニンニクやローズマリー等で味付けされている。この脂身を、ジャムのようにパンに塗りたくり、さらに粉チーズをまぶすという、日本人的にはあり得ないような食べ方をする。でも意外と美味しいから、毎回1枚ぐらいはやってみる。
発泡赤ワイン・ランブルスコで流し込んでいくと、ぱくぱく食べれてしまい、パンが少なくなってくると、できたてのものを追加で補充してくれる。パンだけでなく生ハムも1皿あけると、もう1皿持ってきてくれる。
2人で行って、生ハム2皿で十分腹一杯になるので3皿目までいったことがないが、3皿目を頼んでも料金は一律と思われるので、実質的に食べ放題状態。
〆も圧巻で、「ヌテッラ(写真↓↓)」というチョコレートペーストのようなものが出てくる。これをティジッレ(白の丸い焼きパンの方)に塗って、デザート代わりということらしい。甘さ控えめを好む日本人には規格外な糖度だが、このヌテッラはイタリア人にとってある種ソウルフードのようで、ファンが多い。
会計は、2人で38ユーロ。ニョッコ&ティジッレはいくら食べても一律料金で1人17ユーロ、ランブルスコがボトル1本4ユーロ。
旅行者的にどうやって攻略するか
ただでさえ行く人が少ないモデナという小都市で、さらに市内から少し離れた場所(ドゥオモから約2km)と不便そうですが、以下のような理由から難易度はそこまで高くないと思います
- ボローニャからは電車で25分
- モデナ駅からドゥオモまでは徒歩15分(市内中心からでも駅からでもタクシーで10ユーロ程度)
- 店は夜のみの営業。20時以降は満席だが、少人数で19時頃なら当日でも予約がとれる(週末は難しいかもしれないが一応試してみる価値あり)。滞在ホテルのレセプションで、店名と電話番号が書いてあるホームページを見せるなどして、19時頃に予約をいれてもらう。
- モデナ市内は小さく、タクシー乗り場がいくつかある。有名店なので、運転手もまず知っている。市内から2km、約10ユーロ。
- 店に入ってからは、英語は通じないが、ニョッコ&ティジッレ一択で特に細かく注文するわけではないので何とかなる。
(おわり)