外出制限下でも働かないといけない人がいるということ【イタリアコロナ危機】

先週(3月16〜22日)は、イタリアにとって本当におぞましい1週間でした。

亡くなった方が、書く気もしないような人数に達しました。

「今週か来週がピーク」などと言われていますが、もうニュースを見るのが嫌になりました。

私はこの10日間アパートのドアから一歩も出ないぐらいで、出勤して仕事をするなんて自分には怖くて絶対に無理ですが、こんな状況下でも働かなければならない人たちもいます。

それについてイタリア政府の移動制限令の経緯とともに書いてみようと思います。

 

「移動制限」であって「封鎖」ではない

3月10日に発令された全土移動制限は、メディアによっては「全土封鎖」と書かれてますが、これは武漢で行なわれた「封鎖」とはかなり違うようです。

武漢封鎖下での当局の規制はかなり厳しかったようで、NHKの記事によると、

食料などは団地の住民でまとめて購入するようにしているということで、商店の前が品物が届く場所になっていて、毎日、昼から午後にかけて団地の住民がまとめて購入したものが届く。

食料品の買い出しすら自由にできなかったことが分かります。

 

当初は公園での運動も認められていた「移動制限」

イタリアの「移動制限」が武漢の「封鎖」に比べてかなり緩い点は、例えば、食料品の買い出しはもちろんですが、

  • 新聞をキオスクに買いに行く
  • ペットの散歩
  • 公園での運動

などまで認めらていたことです。(← 後に公園が閉鎖されたり、犬の散歩は家から200m以内までなど厳しくなっていった)

イタリア政府のウェブサイト内に移動制限に関するQ&Aがあり、そこに明記されていました。

 

「外を出歩く人が多すぎる!」の声

3月11日発令のこの移動制限で、さすがに全イタリアに緊張感が走り、みんな大人しく家にいるようになるだろう、と思われていました。

すぐに効果が出るわけはないので、犠牲者は増え続けます。

にも関わらず、政令発令から1週間も経たないうちから、医療従事者、自治体の首長、SNS上などで「外を出歩いている人が多すぎる!」という声が目立ち始めました。

政令が出て6日後の全国紙コッリエレデッラセーラの1面が「外を出歩く人が多すぎる」(参照:corriere.it)

政令発令7日後の18日、同紙のミラノ地方版では、市内の運河沿い(ナヴィーリオ地区)でジョギングする人たちの写真↓(参照:corriere.it)
SNSでもこういう人たちへの批判が多くなり「外を出歩くな!うちにいろ!」という声がトレンドのようになってきました。

散歩やジョギングする人を糾弾・告発するかのようなSNSの空気は、それはそれで重苦しく、ぞわぞわとしました。

私も、隣人が1日に何回も外出するのにいらいらしていましたが、なぜ公園での運動や新聞を買いに行くことまで許可してしまったのか? という気持ちのほうが強かったです。

 

「外で走る人をたたくのはやめよう。問題は工場が稼働していること」

感染拡大が最も深刻なロンバルディア州(州都ミラノ)では、携帯会社のデータを分析して、どれくらいの人が外出しているのかを調べました。

(https://www.corriere.it/cronache/20_marzo_17/coronavirus-cosi-lombardia-controlla-movimenti-via-cellulare-75c3d226-6897-11ea-9725-c592292e4a85.shtml)

分析結果は、40%の人が外を出歩いているというものでした。

このデータを見て、SNSで外出者を糾弾をしている人たちは怒りを増幅させたはずですが、そんなときこれを読みました。

(https://thesubmarine.it/2020/03/19/bergamo-brescia-coronavirus-fabbriche-aperte/?fbclid=IwAR0NsNB26G0nYR-n4HhNBgltZymg5tUY_uXR7H4e3BErxrDyw9VWokJ57J8)

「外で走る人をたたくのはやめよう。問題は工場が動いていること」という見出し。2016年ミラノ創刊のオンラインマガジン「submarine」の記事。

外を出歩いている人への糾弾で、他の問題から目がそれてしまっている。ほとんどの工場は動き続けているため、そこに出勤する人がいて、この状況下で働かなければならない人たちの安全性は守られているのか? 

という部分があり、本当にそうだよなぁと思いました。

全土移動制限令が出た後も、ロンバルディア州でさえ外出者が40%もいるというのはスキャンダラスな数字ではありますが、そこには工場などに出勤する人も含まれているわけです。

3月11日、コンテ首相が全土移動制限を発表したとき、こう言いました。
(http://www.governo.it/it/articolo/conferenza-stampa-del-presidente-conte/14294)

製造業、工場はその生産活動を続けることができます
Industrie, fabbriche, potranno ovviamente continuare a svolgere la propria attività produttive

移動・外出制限下でも、製造業とその工場に関しては緊急時に関係ないような分野でも活動継続を認めた、というところがポイントかと思います。

わたしのまわりにも工場で働いている人が2人いて、移動制限発令後もたしかに働き続けていました。

 

非常時に必要ないものを作る工場も稼働

私の知り合いで工場ではたらいている2人は、タイル関係の会社と、工業用品を作っている会社。

どちらに聞いても「この非常時に必要不可欠なもの(食料品、薬、医療器具)を作っているわけではない」と言っていました。

1人のほうは会社からマスクが支給されたようですが、もう1人はされなかったそうです。

マスクが支給されたほうの彼(工業用品製造の工場)も、

支給されたマスクは、サージマスクではなく簡易的なもの。工場内の消毒はされているようだったが、徹底して行われているようには見えなかった。人との距離を1m以上保つのがルールだが、作業上どうしてもそれができない場面だってある。

と言っていました。

そして、、

移動制限発令8日後の3月19日、イタリアで亡くなった人の人数が中国のそれを上回りました。

それを受けてか、20日(日)に追加の政令が出されてようやく「(食料や薬品など)必要不可欠なもの以外の製造業、工場もストップ」となりました。

今回のコロナ危機でイタリア政府や自治体が打ち出していった一連の対策は、何より意思決定が早く、少なくとも私には信頼できるように思えました。

ただ、この点は小出しになってしまった気がしてなりません。3月11日の全土移動制限令のときからすべての製造業、工場も休止すればよかったのでは?と感じます。

この政令が出た翌日21日(月)から、私の知り合い2人もようやく工場に行かなくてよくなりました。

昨日の政令が出ていなかったら間違いなく自分は今週も工場で働かなくてはならなかっただろう

一人はこう言っていました。

(おわり)

 

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