自分の知り合いで、日本の会社等で働いた経験があるイタリア人3人が言っていたことの中に「(日本では)何かを決めるのが遅い・時間がかかる」というのがあります。
いろいろと段取りを整えたり、上の許可をとるのに時間がかかったり、などが理由のようです。
「イタリアは?」と聞いてみると、3人ともだいたい次のようなことを言っていました。
「イタリアでは何かを決めるのは早い。すぐ決まる。でも詰めの作業が甘いまま見切り発車も多いので、早く決まったはいいがやってみると問題が続出することが多々ある」
イタリア政府・自治体の早い意思決定
①1月31日には中国発着便を休止 イタリアへのコロナ初上陸は、1月末、武漢からの中国人旅行者2人の感染がローマで確認されたときでした。
イタリア政府は1月30日に緊急事態宣言を発令。そして、すぐに中国発着の便を運航休止にしています。
こんな状況になってしまった今では誰も評価してくれませんが、この中国発着便の運航休止決定は、他のヨーロッパ諸国に先駆けての措置でした。
②自治体の休校決定 そして、2月22日(土)ロンバルディア州で確認された最初の爆発的感染。
すぐに同州の11自治体を封鎖し、翌々日の月曜(24日)から、隣の2州も含めて全校休校にしました。
これなんかにしても、決めるのがすごく早いです。
でも、何でも早く決めればいいわけでもない
2月下旬から3月のはじめにかけて感染者がどんどん増えていきます。
個人的には、どう見ても亡くなる人の数が多すぎて緊張がどんどん高まっていく中、まわりが結構あっけらかんとしていてどうやって自己防衛していくか悩んでいた時期。
そして3月7日(土)の午後、感染拡大の中心ロンバルディア州が翌日にも「封鎖」されるという情報がメディアに出回りました。
参照:https://www.tgcom24.mediaset.it/2020/video/coronavirus-esce-la-bozza-del-decreto-la-fuga-da-milano_15849788.shtml
ロンバルディア州の州都ミラノではこの情報がメディアに流れ始めると、大急ぎで荷物をまとめて故郷に帰ろうと考えた人が少なくなかったようです。
実際、私の暮らす町に実家がある友人も、この日の夜、車でミラノを「脱出」して実家に帰って来ました。
結果的に、7日の午後に出回り始めた情報は半分正しく、たしかに翌日未明には政令として決まりました。
半分正しくなかったのは、武漢のような「封鎖」ではなく、実際は自己申告書を携行すれば他都市への移動も可能だったという点。正確には「封鎖」ではなく「移動制限令」だったわけです。
感染拡大の歯止めがかからない時期で全く猶予がなかったとはいえ、これだけの政令を出すのであれば、混乱が起きないように事前にアナウンスを打つべきでした。(もちろん今だから言えるのでしょうが)
例えば、事前に「ミラノから出られなくなるわけではない」といったアナウンスを政令の数日前に出すとか。
このあたりが、冒頭で触れた、決めるのが早いことの弊害なのかもしれません。
ロンバルディア州を「脱出」して南下した感染者かもしれない人たちの処置に、南イタリアの自治体は悩まされることになりました。
ためてためて出された日本の緊急事態宣言
日本で緊急事態宣言が出される4〜5日前ぐらいの何とも言えないもどかしい空気、こちらからネットで情報を追っているだけでも伝わってくるようでした。
近いうち出されることは必至といった空気の中、出し惜しみしているかのような日本政府の物言いにやきもきしていました。
どうせ出すのなら何故さっさと出さない?と思いました。
でも発令の数日前から「欧米のロックダウンとは違う」とか「食料の買い出しは普段通りできる」といったアナウンスをたしかに行っているようでもありました。
4月6日のNHKのニュースの見出し、
宣言を出すための「最終調整」、というのがすごい。本当に日本らしいです。
この宣言「出し惜しみ」の数日が時間稼ぎのようになって、地方の自治体から「疎開」自粛を呼びかける声も上がったりして、どうやら東京から地方へ一斉脱出みたいな大混乱は起きなかったようです。
★★
人は追い込まれた時に本性が現れるように、国も、非常時に良くも悪くも「らしさ」が出ると本当に感じます。
日本もイタリアも、どちらにも優れている点と欠点があるという極めて当たり前のことがすべてだと思っています。
(おわり)