日本人が仏語で書いた小説がイタリア語に翻訳され出版




本を読まない国民

日本でもよく活字離れが言われるが、自分の印象では、イタリア人はもっと本を読まない。電車の中で本を読んでいる人は少なく、本はバカンスのビーチで読むだけ、という人が結構多いです。

イタリアではじめての街を訪れて、ローカルでチェーン展開している書店(例えば神奈川県中心の有隣堂のような)、個人経営で頑張っている書店が、目につくことはあまりない。

どんな町に行っても一等地に「Feltrinelli」という赤い看板の大手書店チェーンがある(冒頭の写真も同店)。日本で、どんな町にも必ず決まった飲食チェーン店があるような感じ。

この「Feltrinelli」は出版社でもあり、自前の本を、最も充実した流通経路である自社の書店で売っている。ただ、ベストセラーのラインナップを見ると、わりと様々な出版社のものがあって「Feltrinelli」一強のような状態にはなっていない。

よしもとばなな、三島由紀夫の翻訳本も

欧州では昔から一定の知名度があるらしい三島由紀夫、イタリアでは結構前から根強い人気のよしもとばなな等も「Feltrinelli」から翻訳本が出ている。

で、先日ボローニャの「Feltrinelli」の前を通りかかると入り口正面ディスプレーの広告に、東洋人女性の横顔があったので立ち止まって、著者名を見ると「Aki Shimazaki」。
shimazaki-aki-peso-dei-segreti出版元は「Feltrinelli」で、題名は「Il peso dei segreti(秘密の重さ)」。
上述してきたように、この最大手出版社から出ているからには、かなり売れた本か、有名な作家のはずなのに、自分は知りませんでした。

Aki Shimazaki

調べてみると、カナダ在住の日本人女性で、フランス語で小説を書き、賞まで受賞しているということ。しかも、現地で生まれ育った日系カナダ人ではなく、日本語が母語の作家。

Wikipediaの日本語ページがなかったので、Feltrinelliの作家紹介項目を見てみると、

1954年、岐阜県生まれ、1991年からモントリオール在住。
2005年、「Hotaru」でカナダ総督文学賞(Prix du Gouverneur-Général)受賞

(http://www.lafeltrinelli.it/libri/aki-shimazaki/peso-segreti/9788807032103)

略歴からすると、まだ外国語習得が比較的容易な20代ではなく、30代からの移住。そこからフランス語を習得し、その第2外国語で小説を書き、それが英語、ドイツ語、ロシア語、ハンガリー語、セルビア語、そして日本語に訳されているというのだから凄いです。

現地で暮らせば言葉を習得できるのか

学生の頃「1年ぐらい英語圏の国に語学留学でもすれば英語なんかすぐマスターできるのに。。」などと妄想していたが、今は、言葉の習得はそんなものではないということがよく分かる。

現地に住んでも習得の意思がなければ全く身につかないのは、会社の駐在員として自分の希望とは関係なく日本で暮らすことになったが、社内でも英語しか使わないため、結局あいさつ程度の日本語しか話せずに母国に帰っていく西洋人が少なくないということからも明らかです。

自分も当初は、5年も住めば母国語のように扱えるようになる、と想像していたが、10年近く経っている今でさえ、映画の細部の会話が分からなかったり、新聞や小説がすらすら読めなかったりと、しょっちゅう情けない思いをしています。

「大人になってから学ぶ言葉をパーフェクトに習得するのは無理」

そんなこともあって、この作家のインタビュー記事の一節はなかなか刺さりました。検索していくと、FROM-MONTREAL.COM、というサイトに特集記事が。

そして大きな転機となるのが1995年、当時40歳の島崎さんは生まれて初めてフランス語の勉強を始める。独学で6ヶ月間、文法を学んだ後、州政府主宰のフランス語学校Katimavikで文法のコースを10ヶ月間受け、作文・聞き取りを集中的に学ぶ。

中略

「大人になってから学ぶ言葉をパーフェクトに習得するのは無理ですよ。今でも辞書を引きながら新聞を読んでいます。でも、毎日が勉強なので退屈することがないですね」

と微笑む島崎さんの日課は毎朝2時間ぐらい辞書を引きながらLe Devoir(フランス語の知的派新聞)を読むことだそうだ。

(http://www.from-montreal.com/people/043.html)

外国語で小説を書いて賞を受賞するような人でも、辞書を引きながら新聞を読んで「毎日が勉強」と言っているのだから、少し救われる(?)思いがしました。